塗仏の宴/京極夏彦

文庫版 塗仏の宴 宴の支度 (講談社文庫)

文庫版 塗仏の宴 宴の支度 (講談社文庫)


文庫版 塗仏の宴 宴の始末 (講談社文庫)

文庫版 塗仏の宴 宴の始末 (講談社文庫)


いまさら読んだのかよっていうツッコミは無しね。

著者自らが語るようにフラクタル構造を取り入れた実験作。短篇一つ一つが同じ構造で、それらを統合する長編も同じ構造であるということはミステリに対するアンチテーゼのようにも思える。何故なら短篇一つを読んだだけで全ての構造も同時にわかってしまうからである。


では、それは成功しているのかどうかというと首肯しにくい。断片の模様が「宗教集団による洗脳」といった安易なものだからだ。つまり「フラクタルにしやすい」のだ。また厳密性もなく「アナロジーに過ぎない」(某F氏談)。
実験精神はおおいに評価できるが、成功はしていないという評価にとどまる。
とはいえ、前作までのシリーズ5作をアナロジーに取り入れたことによるある程度のカタルシスは保証されている。