ハイヒールの死/クリスチアナ・ブランド

ハイヒールの死 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ハイヒールの死 (ハヤカワ・ミステリ文庫)


こういう作品こそ、男性作家では書きえない女流パズラーだと思う。意地の悪い「性差」の筆致。最高。


イギリス新本格と黄金期本格の違い、それは前者が「人間を描くためのパズル」であって、「パズルのための人間」である点だ。それは最もパズル主導のように見えるブランドすらである。そこでは「パズル」が本来持つ「探求心の誘導」が人間の暗部をえぐるために機能する。


ブランドの2大特徴といえば、
1…複雑極まる論理パズル
2…女性の感性でとらえた人間の嫌な面


1のブランドの複雑性は『ジェゼベルの死』、『はなれわざ』などの作品に代表されるように「全ての人間に嫌疑がかかる」→「全ての人間の暗部がかいみまみえる」。

実は1も2へ至るための装置というわけだ。


イギリス新本格はときに喜劇的に、ときに悲劇的に、ときにパズラーを用いて人間を描くことに腐心した作品群なのだと思う。


ところでラストのチャールズワースの○○は笑いところだよね?ブランドは時々とんでもないギャグをかますけど。