幻のマドリード通信/逢坂剛

幻のマドリード通信

幻のマドリード通信

逢坂剛の初期短篇集。スペインもの。
逢坂と言えばサプライズ・エンディングだが、この短篇集でもいかんなく発揮されている。「逢坂につまらない作品はないよ」とは某T氏の弁だが、短篇にいたるまで全ての作品に過剰なくらいのサービス精神が詰まっている。だから本格ファンとしては長編以上に満足度は高い(逢坂が本格だといっているわけではない)。


サプライズという観点で逢坂作品を語る上で「裏切り」というテーマは非常に重要だが、スペイン内戦という舞台設定が非常に機能している。スペイン内戦とは「誰が味方で誰が敵なのかわからなく」なってしまうような混乱の世界史。つまり、「何でもあり」ということ。「裏切り」の影は常に付き纏うゆえに、結末のどんでん返しは非常に説得力を持つ。


気になったのは、スペイン内戦時代の日本との関係。あんなに日本人が跳梁してんのか、スペイン?
ていうかいくつかの作品では日本人が○○○○○として出てくる(はっきり言って想像しがたい。ましてや時代が時代なので)。


そんな瑣末なことは置いておいても楽しめる極上エンターテイメント。