第二の銃声/アントニー・バークリー

第二の銃声 世界探偵小説全集 2

第二の銃声 世界探偵小説全集 2


巨匠の某作品にインスパイアされ、その弱点を補強してみせたところが本書の読みどころの一つなのであろうが、それは真田啓介が解説で詳細に触れているのでそちらを御覧ください。


終盤の7つの告発とそれからインスピレーションを受けた仮説は逆説的で素晴らしいなあと素直に関心。その後の展開にも関心。
しかし、この作品がバークリーの中期の作品であることを鑑みて、彼の十八番の一つが「しつこいくらいのどんでん返し」であることを考えると、順番にシェリンガムシリーズを読んできた人間にとってはいささかマンネリ気味に感じられ、その評価は下がるのかもしれない。
日本ではまだバークリーの翻訳が隆盛を極めてない時期に訳出されたので、まだマンネリズムを感じていなかった日本の読者は幸せなのだろう。バークリーブームが去来した後に読んだ私は正直少しうんざりしました。


ラストのあれに関してはその説得力に脱帽する。バークリーの「人間性の追求」という作品への姿勢がトリックの補強と有機的に結びついている。
また、ピンカートンとアーモレルのすれ違いとそこから生まれるラブコメも良く出来たコメディだなあと思っていたら、これもまたあんな伏線だったとは。


傑作。バークリー慣れさえしていなければもっと傑作。