ロビンソンの家/打海文三


『Rの家』の改題作品。初出は2001年。

 
老母の介護という名目で建てられたRの家という二重の意味での閉鎖空間、および肉体や規範の呪縛からの解放を「母の蒸発」を触媒に物語は展開していく。
 

話のほとんどが「呪縛と解放」というテーマでディスカッションする事だけに費やされるため、人物の内面描写は深化していくが、逆に登場人物と読者の距離は離れていく。この現象は面白い。まあほとんどの人が受肉しているがゆえの矮小さを許諾して生きているんだからしょうがないか。主人公も結局逃げ切れなかったのだから、その辺は作者も解かっていて上手く着地している。
あと、作中作はオースター『幽霊たち』が元ネタなんだが、先に読んでて良かった。この作品を読む人は必ず先にオースター読んどいた方が良い。
ただ、この本が出たの3年前の話だから記憶が曖昧だけど、売春行為の是非がクローズアップされたのってもっと以前だったような気が。ちょっと時代とピントずれてるかも。
 

打海文三読んだの初めてだけど、これって異色作ということで良いんでしょうか?