オーデュボンの祈り/伊坂幸太郎

オーデュボンの祈り (新潮文庫)

オーデュボンの祈り (新潮文庫)


伊坂のデビュー作。


今まで『陽気なギャング〜』とか『重力ピエロ』とか脂の乗った伊坂しか読んでいなかったので、この作品の若書きには物足りなさを感じる。しかし、それでもプロットの巧さの片鱗は見せるし、「何故案山子は殺されたか」という謎の求心力も十分にある。
ファンタジーすれすれの閉鎖的コミュニティーを舞台にした理由は当然ラストで自ずと解かるが、如何せんその構成員個々および集合の描写力は無いので、せっかく良いオチを考えたのに台無しになっていると思う。ガルシア=マルケスなんか比較すると面白いかも。

現在では伊坂の十八番になっている軽妙洒脱トークもデビュー作とあってか、パワーを感じない。
文庫落ちなんて待たずに発表順に読めば良かったと激しく後悔。順番に読んでればこの作品の個人的評価はもっと上がっていたのかも。