ワイオミングの惨劇/トレヴェニアン

ワイオミングの惨劇 (新潮文庫)

ワイオミングの惨劇 (新潮文庫)


傑作。もはやそれ以外何も言うまい。

嘘。少しだけ感想。
従来のトレヴェニアン評価の一つである「小説の定型にはまらない」というのはそれほど感じなかった。前作前々作と比べてもプロットが千変万化であるのは解かるのだが、登場するの人間の観念は通底しているので、やはり同じような読後感がもたらされる。もっとも高品質なので飽きたりはしませんけど。
あと解説にもある通り、ウェスタンのとある街という閉鎖されたファンタジック空間内のドラマ描写は上手い。内部に生きる人々の日常のさりげないシーンを丹念に描写してあるために、ラストのオチが引き締まっていて良かった。ちょっと涙腺が緩んだ。

必読の一冊だと思う。