七人のおば/パット・マガー

七人のおば (創元推理文庫)

七人のおば (創元推理文庫)


前に読んだ『探偵を捜せ』がコンセプト倒れで面白くなかったので、しばらくパット・マガーから遠ざかっていた。パット・マガー=コンセプトは面白いがそれを活かせない作家という図式が出来あがってしまっていたのだ。
しかし、代表作といわれるこの作品を読んで、蒙を啓かれる。パット・マガーは面白い。


犯人捜しと被害者捜しが同時に進行するという試みに対して、マガーが仕掛けた真相は決して引けをとらない。強いて言うならば、コンセプトが念頭にあると真相が解かりやすくなるという本格マニア相手のみの欠点はあるが、それでも十分評価に値する綺麗なオチ。


しかし、この作品の最大の魅力は七人のおば達の人物造詣だろう。七人もいるのかよ覚えられねーとか思っていたらあら不思議、すらすらキャラクターが印象付けられる。活き活きとした(勿論負のベクトルの)人間描写は群を抜いて巧いために、物語の牽引力は高い。
また、それらの人物達の関係性も非常に巧く出来ているので、常に起こるトラブルも見ていて飽きず、筋だけ聞くと厭な話なのにコメディを読んでいるような気さえしてくる。


若草物語のようであったり、フレンチミステリーのようであったり、しかしコメディにも思える不思議な魅力を備えた一冊。リーダビリティの高さには膝をうった。