鏡よ、鏡/スタンリー・エリン

鏡よ、鏡 (ハヤカワ・ミステリ文庫 36-3)

鏡よ、鏡 (ハヤカワ・ミステリ文庫 36-3)


1972年。


恥ずかしながらエリンの長編作品というとこの作品が読むの初めてだったりする。『バカミスの世界』で言及されている作品なので、大笑いできるかと思って気晴らしに手にとってみた。


残念ながらジェイムズ・ジョイスとかに明るくないので、「意識の流れ」なる手法がどんな文学的価値を持っているのかはさっぱりわからない。
ただ、そんな文学素人の私が一つ言えるのは、この手法はイカれているということだ。
空間・時間が吹っ飛ぶ吹っ飛ぶ。しかも主人公のほとんどの意識はセックスに向けられている。ノリノリの性描写のマシンガン。
しかも、それを逆手に取って、動機捜しの心の旅がとんでもない結末に変貌していく。
結末の後味の悪さ、驚きのための特異な手法だったのか!と読者は最後のページで理解するのである。


そして再読。タイトルが、文庫版表紙が、奇妙な裁判シーンが。全てがこの驚愕の結末に奉仕している。変態的とも言える伏線がばっちり決まっている。


異色短篇作家として人気のあるエリンだが、彼の歴史にこの色物長編が燦然と輝く。凄すぎる。