目を擦る女/小林泰三

目を擦る女 (ハヤカワ文庫JA)

目を擦る女 (ハヤカワ文庫JA)


文庫オリジナル短篇集。


ホラー、ミステリ、ハードSFなど様々なジャンルで構成された本作品集だが、「夢と現実」(仮想世界と言い換えてもよい)というテーマで揃えられている。


よってしばしば作中の登場人物達は、そして読者は自らが置かれた世界の構造を知るために論理を持ち出すのだが、この論理が持つ様々な属性が小林の最大の持ち味と言っても過言ではない。


先ず、論理とはとても怜悧である。情感を排したこのそらぞらしさ。
また、論理とは粘着質である。しつこくねちっこく展開する。そしてやがて読者にグルーブ感が生まれる。
そして、論理とは馬鹿げている。突き詰めた先の絶望、諦念からやがて笑いすら起き上がってくる。


ジャンルなど論理を召喚するための手段に過ぎないという割り切りに気付くと、あら不思議。「超限探偵Σ」とか傑作ですよ。


というわけで、小林泰三の作家性を垣間見た短篇集でございました。
上記の理由からどの作品も面白く読めたので、ベストは選出できない。
印象に残ったのは粘着グルーブ小説「未公開実験」。