模倣の殺意/中町信

模倣の殺意 (創元推理文庫)

模倣の殺意 (創元推理文庫)


1973年。2004年改訂。


和製本格ミステリ万歳!そう叫びたくなるような作品。


もちろん『虚無への供物』みたいな仰々しい「傑作」が期待されるわけではなく、軽本格の秀作というのが正しい。


軽妙な語り口、淡々としたアリバイトリック、発表された時代を考慮すれば十分に驚倒に値する真相など、読者を飽きさせず読ませるエンターテイメント性の高さはポイント高し。各ネタの配置の美学ともいえるプロットのクオリティの高さはこの系列の作品でもかなり上位に入ると思われる。全編だれずに読める稀有な作品。


元版を読んでいないので解説に書いてあることを鵜呑みにすると、今回の決定版では特に現代の読者の嗜好を意識したトリック面の改良が加えられており、職人的サービス精神を感じる。敬愛する作家は鮎川とクリスティらしく、両者とも職人的技巧を持って読者へサービスする事を信条とした作家なので、かなり影響があるんじゃないだろうか。


とりあえず、本格好き(≠ネタ読み)なら読むべし。