太陽の塔/森見登美彦

太陽の塔

太陽の塔


第15回日本ファンタジーノベル大賞受賞。


「なんじゃこりゃあ」とうめいてしまうようなラストの展開。それまでの起伏に乏しいプロットが嘘みたいだった。受賞した賞の性質を考えて、これがやりたかったがためにあんなに鬱々としたキャラやプロットを用いたのかと思うと、バカファンタジースレスレである。多分、この小説が好きな人は「自意識が肥大化した語り手」が好きなのだろうが、私はこのバカなラストが大変楽しかったのでそこを買う。


しかし、別にラストに至るまでの展開が嫌いなわけではない。ただ「自意識が肥大化した語り手」というより、もう一つ上のレベルで自嘲的に語っている*1(あるいは騙っている)ので、そこまでは入りこめない。
誇張して書かれてはいるものの、ある程度は人間の普遍的な精神ではあるので、実はあんまり読者を選ばないという利点はあるけども。

*1:主人公と作者の経歴をわざわざ酷似させているところとか。