百番目の男/ジャック・カーリイ

百番目の男 (文春文庫)

百番目の男 (文春文庫)


 注目の大型新人…のはずが、特に目新しいものは何もなかった。良くも悪くもアメリカン・エンターテインメントをお勉強してきたといった感じで、見たことのあるようなエピソードばっか。映画化が早々に決まっているらしいが、裏を返せば映画化できてしまうような素材ばかりで構成されているといっても過言じゃない。脂ものばかりの幕の内弁当というか、少々胃がもたれる(語り口は軽快だが)。
 
 が、帯等で散々煽られている「驚愕の真相」には唖然。バカミス琴線が大いに揺らされる。何か仕掛けてくるぞ、と相当構えて読んだのに物凄い不意打ちを食らった。巷によくある「驚愕の真相」系は結構目にしてきたが、こんなに驚いた(そして笑った)のは近年稀だ。この一点のみにおいて、ミステリ史に名を刻んでもいいとすら思った。
 
 おそらく、これは小説だからこそ効果が高い仕掛けだと思う。問題のシーンは確かに映像化してみたくもあり、多くの読者が頑張って頭の中で映像化してみたことかと思うが、ただ文字のみで「ラッツラッツホーホーホー」とか書いてあるだけだから想像力をかきたてられるのであって、最初から映像で見せられていたら萎えたかも。ここは文字と映像のギャップを巧く用いた作者の勝利か。読者自らの想像力は、どのような情報にも勝る。

 とりあえず、ラスト数十ページだけで十分元はとれる。バカミス好き必読。