ギブソン/藤岡真
- 作者: 藤岡真
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2005/04/09
- メディア: 単行本
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『ゲッベルス〜』、『六色金神〜』を読んでから久しい。待望の第3作である。デビューからの数え年からしてこの作家をフロンティアのレーベルに入れてしまうのはどうかと思ったが、良い意味でも悪い意味でも初々しさの抜けない作家だから別に違和感はないか。
さて、本論に入ると『ギブソン』は藤岡真の現時点での最高傑作としても良い出来だと思う。相変わらずの味気ない文章は比較しえないので、ミステリ的ネタのみの比較だけど。今回のネタのインパクトには非常に興奮した。
今回のネタがなぜ興奮するかといえば、それは簡単に説明できる。以下ネタバレ。
→『ギブソン』最大の特徴はその過剰性だ。謎に対しておびただしい量の情報が錯綜する。具体的に上げるなら、「高城はどこへ消えたのかという謎に対して、最初の3択に加え自宅に帰ったという第4の説の提示」、「赤い車の正体に対して、似非消防団と赤いワゴン」、「ストーカーは誰かという謎に対して、今泉と高城親子」、「高城の娘(と思われていた)のは誰かに対して、複数の女性」などなど。
要はミスディレクションが過剰なのだ。個々の謎に3つも4つも仮説が成り立つうえに、どうでも良さげなキャラの乱立や整理しきれていないプロットの弊害もあって、なかなか真相を看破できないもどかしさが募る。
しかし、このフラストレーションの果ての真相の出来が結構良い。それまでの乱戦とちゃんと逆ベクトルで処理した際立つラスト。『ギブソン』はここらの匙加減が非常に上手い。どうでもよくなる程の過剰さとそれらを活かしつつきちんと区切られた真相の折り合いがものすごく良かった。
次に藤岡真の新作が読める数年後が楽しみになった。それまで頑張って生きるか。