アルバイト探偵/大沢在昌

アルバイト探偵 (講談社文庫)

アルバイト探偵 (講談社文庫)


 大沢在昌に疎い私は、よくよく考えてみると氏の作品で新宿鮫シリーズ以外読んだことがない。というわけで、反省&好奇心で手を出すことにした。


 無駄にデカイ事件のスケール、「運良く」の連発で核心に迫っていくご都合主義的なプロット、誰と戦っても必ず勝利をおさめてしまう最強の「親父」。あまりにも軽々しい奔流にあって、ハードボイルドに付きものの葛藤や苦悩など皆無だ。
 主人公の出生の秘密や親父の過去といったシリアスな要素も、次回へ続くの繰り返しで持ち越しに次ぐ持ち越し。あまりの力の抜きように拍子抜けすることもしばしば。

 
 しかし、その肩の凝らなさこそこの作品が獲得した得がたいエンタメ要素。旅のお供にアルバイト探偵。1話たったの70ページでそれなりの冒険とそれなりのカタルシスが味わえる。これは長所だ。


 加えて、今時の若者*1の語り口がなかなか良い感じ。国家転覆の一大時と対照的で可笑しい。しょうもない下ネタ多し。


 以前、このシリーズをドン・ウィンズロウのニール・ケアリーシリーズに比肩させた意見を聞いたことがあるが、それならば私はアルバイト探偵に軍配を挙げたい。「深刻ぶった微温さ」が気に食わないウィンズロウ*2よりも、「テキトーでおちゃらけた微温さ」の本作の方が個人的には好みだ。


 暇を見つけてはちょくちょく浸りたいサウナ。そんな感じ。もちろんこれは賛辞。

*1:あくまで発表当時の「今時」。…にしてはちょっと親父くさい&レトロかも。この時代に本当にスケ番なんていたんですか?まだガキだったんで確認しようがない。

*2:もっとも私はウィンズロウの良い読者ではなく、シリーズ全部読んだわけでもないので誤解が多々あるのかもしれない。