アルバイト探偵/大沢在昌
- 作者: 大沢在昌
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1995/07/06
- メディア: 文庫
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大沢在昌に疎い私は、よくよく考えてみると氏の作品で新宿鮫シリーズ以外読んだことがない。というわけで、反省&好奇心で手を出すことにした。
無駄にデカイ事件のスケール、「運良く」の連発で核心に迫っていくご都合主義的なプロット、誰と戦っても必ず勝利をおさめてしまう最強の「親父」。あまりにも軽々しい奔流にあって、ハードボイルドに付きものの葛藤や苦悩など皆無だ。
主人公の出生の秘密や親父の過去といったシリアスな要素も、次回へ続くの繰り返しで持ち越しに次ぐ持ち越し。あまりの力の抜きように拍子抜けすることもしばしば。
しかし、その肩の凝らなさこそこの作品が獲得した得がたいエンタメ要素。旅のお供にアルバイト探偵。1話たったの70ページでそれなりの冒険とそれなりのカタルシスが味わえる。これは長所だ。
加えて、今時の若者*1の語り口がなかなか良い感じ。国家転覆の一大時と対照的で可笑しい。しょうもない下ネタ多し。
以前、このシリーズをドン・ウィンズロウのニール・ケアリーシリーズに比肩させた意見を聞いたことがあるが、それならば私はアルバイト探偵に軍配を挙げたい。「深刻ぶった微温さ」が気に食わないウィンズロウ*2よりも、「テキトーでおちゃらけた微温さ」の本作の方が個人的には好みだ。
暇を見つけてはちょくちょく浸りたいサウナ。そんな感じ。もちろんこれは賛辞。