チェス殺人事件

ボーナストラック。

推理の過程で明らかになる「謎解きのどうでもよさ」。人間が真理を感得するための越えがたい壁が立ちはだかる。
現場に残された証拠はどれも作為的に見え、どのようにも解釈できてしまう。ゲームの限界。
少ないページながら、小味の効いた短篇だ。さすがに『将棋〜』や『トランプ〜』のような「虚実の揺らぎ」を体験するには少なすぎる枚数だが、あくまでボーナストラックと割り切れば楽しめるのでは。
シリーズレギュラーの須堂の不在が寂莫とした印象も残す。